*重要教育資料入門*『食に関する指導の手引き―第二次改訂版―』(平成31年3月)
-2019.8.9-
『食に関する指導の手引き―第二次改訂版―』
〈第1章 学校における食育の推進の必要性〉
(平成31年3月)
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▼平成19年3月に初版を作成し、平成22年3月の第一
次改訂を経て、平成29年から平成31年までの新学習指
導要領等の改訂を踏まえ新たに改訂したもの。具体的
には、学校における食育の必要性、食に関する指導の
目標、食に関する指導の全体計画、職に関する指導の
基本的な考え方や指導方法、食育の評価について示し
ている。
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第4節 学習指導要領の改訂
1 中央教育審議会の提言
中央教育審議会では、平成28年12月の答申「幼
稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校
の学習指導要領等の改善及び必要な方策について」
(以下「答申」という。)の中で、「現代的な諸課
題に対して求められる資質・能力」の中の「健康・
安全・食に関する資質・能力」として食に関する資
質・能力の考え方が示されました。
現代的な諸課題に対応して、子供の姿や地域の実
情を踏まえつつ、以下のような力を育んでいくこと
が「答申、別紙4」(省略)に記載されています。
2 学習指導要領における食育の位置付け及び幼児
教育における食に関する指導
学校における食に関する指導は、従来給食の時間
や関連教科などにおいて、食生活と心身の発育・発
達などの内容に関しての指導が行われてきています
が、食育の推進が大きな国民的課題となり、平成20
年に告示された小学校、中学校の学習指導要領総則
及び平成21年に告示された高等学校、特別支援学校
の学修指導要領総則に「学校における食育の推進」
が初めて位置付けられました。また、平成20年に告
示された幼稚園教育要領においても、食育に関する
内容が充実されました。そして、答申も踏まえ、平
成29年に告示された小学校、中学校、特別支援学校
小・中学部の学習指導要領総則、平成30年に告示さ
れた高等学校の学習指導要領総則及び平成31年に告
示された特別支援学校高等学部学習指導要領総則に、
「学校における食育の推進」がこれまで以上に明確
に位置づけられ、小学校、中学校、各教科、道徳科、
外国語活動及び総合的な学習の時間帯が加えられま
した。
(1)学校における体育・健康に関する指導
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第1章 総則
第1 小学校(中学校)教育の基本と教育課程の
役割
2(3)学校における体育・健康に関する指導を、
児童(生徒)の発達の段階を考慮して、学
校の教育活動全体を通じて適切に行うこと
により、健康で安全な生活と豊かなスポー
ツライフの実現を目指した教育の充実に努
めること。特に、学校における食育の推進
並びに体力の向上に関する指導及び心身の
健康に関する指導については、体育科(保
健体育科)、家庭科(技術・家庭科)及び
特別活動の時間はもとより、各教科、道徳
科〈、外国語活動〉及び総合的な学習の時
間などにおいてもそれぞれの特質に応じて
適切に行うよう努めること。また、それら
の指導を通して、家庭や地域社会との連携
を図りながら、日常生活において適切な体
育・健康に関する活動の実践を促し、生涯
を通じて健康・安全で活力ある生活を送る
ための基礎が培われるよう配慮すること。
※〈 〉内は小学校のみの記載。( )内は中学校
において記載。
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総則では、学校における食育の推進が位置づけら
れており、児童生徒の発達の段階を考慮して、学校
教育活動全体として取り組むことが必要であること
を強調しています。
現在、栄養摂取の偏りや朝食欠食といった食習慣
の乱れ等に起因する肥満・やせや生活習慣病等の健
康課題が見られるほか、食品の安全性の確保等の食
に関わる課題が顕在化しています。
こうした課題に適切に対応するため、児童生徒が
食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付け
ることにより、生涯にわたって健やかな心身と豊か
な人間性を育んでいくための基礎が培われるよう、
栄養のバランスや規則正しい食生活、食品の安全性
などの指導が一層従事されなければならないとして
います。また、これらの心身の健康に関する内容に
加えて、自然の恩恵・勤労などへの感謝や食文化な
どについても教科等の内容と関連させた指導を行う
ことが効果的であるとしています。食に関する指導
に当たっては、給食の時間を中心としながら、体育
科(保健体育)における望ましい生活習慣の育成や、
家庭科(技術・家庭科)における食生活に関する指
導、特別活動における学級活動はもとより各教科、
道徳科〈、外国語活動〉及び総合的な学習の時間で
の指導などを相互に関連させながら、学校教育活動
全体として効果的に取り組むことが重要であり、栄
養教諭等の専門性を生かすなど教師間の連携に努め
るとともに、地域の産物を学校給食に使用するなど
の創意工夫を行いつつ、学校給食の教育的効果を引
き出すよう取り組むことが重要であるとしています。
(2)教育課程の編成及び実施
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第1章 総則
第5 学校運営上の留意事項
1 イ 教育課程の編成及び実施に当たっては、学
校安全計画、職に関する指導の全体計画、
いじめの防止等のための対策に関する基本
的な方針など、各分野における学校の全体
計画等と関連付けながら、効果的な指導が
行われるように留意するものとする。
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これは、教育課程の編成及び実施に当たり、法令
等の定めにより学校が策定すべき各分野の全体計画
等と関連付けて、当該全体計画等に示す教育活動が
効果的に実施されるようにすることを示しています。
各学校は、法令等の定めにより、学校保健計画、学
校安全計画、食に関する指導の全体計画、いじめ防
止等のための対策に関する基本的な方針など、各分
野における学校の全体計画等を策定することとされ
ています。これらの全体計画等には、児童生徒への
指導に関する事項や学校運営に関する事項を位置付
けることとなります。そのため、教育課程の編成及
び実施に当たっては、これらの全体計画等との関連
付けを十分に行うことで、カリキュラム・マネジメ
ントの充実が図られ、より効果的な指導を実現する
ことにつながります。
(3)食育とカリキュラム・マネジメント
「カリキュラム・マネジメント」とは教育課程に
基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の
向上を図っていくことです。学校指導要領に基づき、
子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が
設定する学校教育目標を実現するために、教育課程
を編成し、それを実施・評価し改善していくことが
求められています。育成を目指す資質・能力を育ん
でいくためには、学習指導要領に基づき、各学校が
教育課程を組み立て、家庭・地域と連携・協働しな
がら実施し、目の前の子供たちの姿を踏まえながら
改善を図ることが求められます。こうした「カリキ
ュラム・マネジメント」は、学習指導要領解説総則
編で以下の三つの側面から整理して示されています。
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○児童(生徒)や学校、地域の実態を適切に把握し、
教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を
教科等横断的な視点で組み立てていくこと。
○教育課程の実施状況を評価してその改善を図って
いくこと
○教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確
保するとともにその改善を図っていくこと。
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食に関する内容は教科等横断的な視点に立った学
習が求められます。そのため、食に関する指導の全
体計画を作成する段階では、地域の実情や子供たち
の姿を踏まえ、各教科等や学級活動の関連を明らか
にします。その上で、各教科等の具体の内容を関連
付けながら効果的な年間指導計画などについて校内
研修等を通じて研究していくことが重要です。
そして、食に関する内容について給食の時間を含
む必要な教育内容を意図的に配列した教育課程を全
教職員で組織的に実施できる体制を構築し、PDCA
サイクルに基づき進めていくことが必要となります。
(参考:NSK教採通信)