重要教育資料問題対策 これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について
-2016.4.28-
これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について
~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~
平成27年12月 中央教育審議会
最近の教育教養では、資料問題の比重が大変高くなっています。特に教育時事の問題では、新しい資料による出題が大変多いです。しかし、資料問題の傾向は変わりつつあります。このコーナーでは、今後出題が予想される重要な資料について紹介・解説していきます。
今回は、3つの中教審答申のうち『これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について』を紹介します。
1.検討の背景
【教員政策の重要性】
◆新たな知識や技術の活用により社会の進歩や変化のスピードが速まる中、教員の資質能力向上は我が国の最重要課題であり、世界の潮流でもある。
【学校を取り巻く環境変化】
◆近年の教員の大量退職、大量採用の影響により、教員の経験年数の均衡が顕著に崩れ始めており、かつてのように先輩教員から若手教員への知識・技能の伝承をうまく図ることのできない状況があり、継続的な研修の充実のための環境整備を図るなど、早急な対策が必要である。
【学び続ける教員】
◆学ぶ意欲の高さなど、我が国の教員の強みを最大限に生かしつつ、子供に慕われ、保護者に敬われ、地域に信頼される存在として更なる飛躍が図られる仕組みの構築が必要である。
【社会に開かれた教育課程とチーム学校】
◆教育課程の改善に向けた検討と歩調を合わせながら、各教科等の指導に関する専門知識を備えた教えの専門家としての側面や、教科等を超えたカリキュラム、マネジメントのために必要な力、アクティブラーニングの視点から学習指導方法を改善していくために必要な力、学習評価の改善に必要な力などを備えた学びの専門家としての側面も備えることが必要である。
◆学校の教職員構造を転換し、チームとしての学校の教育力・組織力を向上させることが必要であり、その中心的役割を担う教員一人一人がスキルアップを図り、その役割に応じて活躍できるようにすることとそのための環境整備を図ることが重要である。
【教員改革のチャンス】
◆我が国の教員の強みを生かしつつ、教員制度を改革し、新たな学びを支える新しい教員像を打ち出すことができれば学校教育の質を高め世界に発信できるチャンスであり、教員の養成・採用・研修の一体的改革を推し進めるべきである。
2.これからの時代の教員に求められる資質能力
◆これまで教員として不易とされてきた資質能力に加え、自律的に学ぶ姿勢を持ち、時代の変化や自らのキャリアステージに応じて求められる資質能力を生涯にわたって高めていくことのできる力や、情報を適切に収集し、選択し、活用する能力や知識を有機的に結びつけ構造化する力などが必要である。
◆アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善、道徳教育の充実、小学校における外国語教育の早期化・教科化、ICTの活用、発達障害を含む特別な支援を必要とする児童生徒等への対応などの新たな課題に対応できる力量を高めることが必要である。
◆「チーム学校」の考えの下、多様な専門性を持つ人材と効果的に連携・分担し、組織的・協働的に諸課題の解決に取り組む力の醸成が必要である。
○教員が備えるべき資質能力については、例えば使命感や責任感、教育的愛情、教科や教職に関する専門的知識、実践的指導力、総合的人間力、コミュニケーション能力等がこれまでの答申等においても繰り返し提言されてきたところである。これら教員として不易の資質能力は引き続き教員に求められる。
○今後、改めて教員が高度専門職業人として認識されるために、学び続ける教員像の確立が強く求められる。このため、これからの教員には、自律的に学ぶ姿勢を持ち、時代の変化や自らのキャリアステージに応じて求められる資質能力を、生涯にわたって高めていくことのできる力も必要とされる。
○また、変化の激しい社会を生き抜いていける人材を育成していくためには、教員自身が時代や社会、環境の変化を的確につかみ取り、その時々の状況に応じた適切な学びを提供していくことが求められることから、教員は、常に探究心や学び続ける意識を持つこととともに、情報を適切に収集し、選択し、活用する能力や知識を有機的に結びつけ構造化する力を身に付けることが求められる。
○更に、子供たち一人一人がそれぞれの夢や目標の実現に向けて、自らの人生を切り開くことができるよう、これからの時代に生きる子供たちをどう育成すべきかについての目標を組織として共有し、その育成のために確固たる信念をもって取り組んでいく姿勢が必要である。
○一方、学校を取り巻く課題は極めて多種多様である。いじめ・不登校などの生徒指導上の課題や貧困・児童虐待などの課題を抱えた家庭への対応、キャリア教育・進路指導への対応、保護者や地域との協力関係の構築など、従来指摘されている課題に加え、先に述べた新しい時代に必要な資質・能力の育成、そのためのアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善や道徳教育の充実、小学校における外国語教育の早期化・教科化、ICTの活用、インクルーシブ教育システムの構築の理念を踏まえた、発達障害を含む特別な支援を必要とする児童生徒等への対応、学校安全への対応、幼小接続をはじめとした学校間連携等への対応など、新たな教育課題も枚挙にいと
まがなく、一人の教員がかつてのように、得意科目などについて学校現場で問われる高度な専門性を持ちつつ、これら全ての課題に対応することが困難であることも事実である。
○そのため、教員が上記のように新たな課題等に対応できる力量を高めていくのみならず、「チーム学校」の考え方の下、教員は多様な専門性を持つ人材と効果的に連携・分担し、教員とこれらの者がチームとして組織的に諸課題に対応するとともに、保護者や地域の力を学校運営に生かしていくことも必要である。このため教員は、校内研修、校外研修など様々な研修の機会を活用したり自主的な学習を積み重ねたりしながら、学校作りのチームの一員として組織的、協働的に諸課題の解決のために取り組む専門的な力についても醸成していくことが求められる。
4.改革の具体的な方向性.
(1)教員研修に関する改革の具体的な方向性
◆「教員は学校で育つ」ものであり、同僚の教員とともに支え合いながらOJT を通じて日常的に学び合う校内研修の充実や、自ら課題を持って自律的、主体的に行う研修に対する支援のための方策を講じる。
(2)教員採用に関する改革の具体的な方向性
◆国及び各都道府県の教育委員会等は、後述する教員育成協議会(仮称)における協議等を踏まえ、採用前の円滑な入職や最低限の実践力獲得のための取組を普及・推進する。
◆国は、教員採用試験の共通問題の作成について、各都道府県の採用選考の内容分析やニーズの把握等、必要な検討に着手する。
◆国は、後述のように特別免許状授与の手続の改善を図るなど活用を促進する。
◆国は、特別免許状以外にも、教員免許を有しない有為な外部人材を教員として確保するための方策について検討する。
(3)教員養成に関する改革の具体的な方向性
◆教員免許状の取得に必要な単位数は増加させないことを前提として、新たな教育課題に対応できるよう教職課程の内容を精選・重点化する。
◆国立の教員養成を目的とする大学・学部は、地域のニーズを踏まえつつ、新たな教育課題に対応した取組を率先して実施し、他大学・学部におけるモデルを提示して、その取組を普及? 啓発する。
◆教職課程については、学校種ごとの特性を踏まえつつ、「教科に関する科目」と「教職に関する科目」等の科目区分を撤廃し新たな教育課題等に対応できるよう見直す。
◆国は、学校インターンシップの実施について、教育実習との役割分担を明確化しつつ、受入れ校、教育委員会、大学との連携体制の構築、大学による学生への適切な指導などの環境整備について検討する。
◆学校インターンシップについては、教職課程において義務化はせず各大学の判断により教育実習の一部に充ててもよいこととする。