出題の増加が予想される 『特別支援教育』と『障がい者支援制度改革』
-2016.2.25-
『特別支援教育』の出題は、すでに教職教養の一つの領域として大変高い出題率となっており、『障がい者制度改革』と合わせて、ここ数年ますます増加しています。そして、どの自治体でも出題されています。重要な法改正もあり、多くの資料が出題されています。最新の傾向を見ながら、『障がい者制度改革』をよく把握し、今年の対策として十分にやっておきましょう。
★『特別支援教育』の出題傾向
『特別支援教育』に関する出題は、特別支援学校の志望者だけではなく、すべての教職教養に必ず出題されるようになりました。増え続けていた問題数も固定されてきています。そして、出題内容の傾向もだいぶ固定化してきたと言っていいでしょう。難易度も少しずつですが上昇してきており、確実な対策が必要となります。
これまでの教職教養の問題は、教育原理・教育放棄・教育心理・教育史に大分類できますが、『特別支援教育』についての問題は、これらの領域すべての要素を含む問題となっています。そのため、『特別支援教育』はこれまでのような分類で学習するのではなく、総合的な対策が必要となっています。
では、出題の内容を見てみましょう。
出題のパターンはわりと限られています。最近の出題問題は次の4つに分類されます。
1.法規に関する出題
2.資料による出題
3.心理・発達障害に関する問題
4.最近の動向など総合問題
この4つの出題例の割合は、年によって若干の違いがあり、最近は心理に関する出題は減少傾向にあり、資料・法規に関する問題の比率が高くなていますが、どちらにしても、4つの出題率にそれほど大きな差はありません。均等に学習するべきでしょう。それでは次で出題パターン別で傾向を見てみましょう。
★資料問題は?
一般的な資料問題は、資料が公表された直後は出題が多くなります。それに対して『特別支援教育』について言えば、決して新しいとは言えない資料も多く出題されています。
『特別支援教育』の理念について端的に説明している『特別支援教育の推進について(局長通知)』は平成19年4月に出されたものですが、今でも多くの出題があり、これからも続くと思われます。内容は、「1.特別支援教育の理念 2.校長の責務 3.特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組 4.特別支援学校における取組 5.教育委員会等における支援 6.保護者からの相談への対応や早期からの連携 7.教育活動等を行う際の留意事項等」から構成されており、出題は「3.特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組」が特に多く、「4.特別支援学校における取組」や「7.教育活動等を行う際の留意事項等」などからも出題されています。「3.特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組」には「(1)特別支援教育に関する校内委員会の設置(2)実態把握(3)特別支援教育コーディネーターの指名(4)関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用(5)「個別の指導計画」の作成(6)「教員の専門性の向上」の6項目が示されていますが、(1)(3)(4)を中心に全体から出題されています。まさに『特別支援教育』の基礎・基本がまとまっている資料です。
また、最近出題が集中しているのは、中央教育審議会の特別委員会の報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別教育の推進」である。これは、障害者の権利に関する条約の国連における採択、政府の障害者制度改革の動き、中教審での審議、障害者基本法の改正等について記述しています。
他の資料では「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」(平成25年10月)、「障害のある児童生徒の教材の充実について(報告)」(平成25年8月)、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月・内閣府)などが大変多く出題されています。
★障害者制度改革に要注意
最近出題が増加している上記の資料を見ると、文科省の特別支援教育に関する資料だけではなく、内閣府などの資料も出題されていることが分かります。トピックス3で紹介する「障害支援制度の改革」について流れを確実に理解しておきましょう。すでに公表されてから数年たつ資料も出題が増えています。
特に平成24年7月の中教審分科会報告、平成27年2月の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」は今後も出題が続くと思われます。
★法規に関する問題
『特別支援教育』に関する法規の問題も、出題される法律は限定されています。最も基本となる、教育基本法第4条第2項を中心に、学校教育法第8章の特別支援教育から第72条から81条、特に72条・74条・76条・81条などは出題率が高いです。また、学校教育法施行令第22条の3はこれまで、特別支援学校の専門教養では出題されていても、教職教養では必要ありませんでしたが、最近は教職教養でも出題された自治体がるので、確認しておきましょう。また、学校教育法施行規則140条や、特別支援学校への就学奨励に関する法律なども出題されるようになっており、その範囲は広がっています。
また、障害者制度改革で改正された学校教育法施行令も出題が続き、今後は28年に施行される「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の出題も十分に予想されます。