≪特集≫『道徳教育』今年の出題
-2015.11.20-
平成26年10月に中央教育審議会から「道徳に係る教育過程の改善等について」と題する答申が公表され、平成27年3月に「学習指導要領の一部改訂」が告示されました。2018年から全面実施されます。「道徳」については、もともと出題数も多く、今年の教員試験では、この「道徳」についての出題が最も注目されました。では、今年はどのように出題されたのか、そして、来年に向けて何をどのように準備していけばいいのかまとめてみました。
◆今年の「道徳」の出題
今年の「道徳」に関する出題を大きく分類すると次の3つに分けることができます。1つは、中教審答申「道徳に係る教育課程の改善等について」からの出題です。2つ目は改訂された学習指導要領自体からの出題。3つめは、改訂の内容等について、出題者独自の文章による問題です。これ以外に、改訂前の平成20年版の学習指導要領からの出題もわずかにありましたが、来年以降は出題の定能性は全くないので、今後は無視していいでしょう。
この3種類の分類で、最も多かったのは1つ目の中教審答申からの出題です。次に学習指導要領自体からの出題でした。それぞれ、どのように出題されたのか紹介します。
◆中教審答 は総論の理解が必要
中教審答申の内容は「1 道徳教育の改善の方向性」、「2 道徳に係る教育課程の改善方策」、「3 その他改善が求められる事項」の3部構成で書かれています。この中で出題が集中したのは、「且道徳教育の改善の方向性」です。そのうち特に「(1)道徳教育の使命」からの引用が最も多くありました。この部分は、今回の改訂の内容について説明したもの
ではなく、文字通り「道徳教育の使命」について述べた2000字足らずの短いものです。つ
まり、改訂の細かい内容を理解する前に、学校教育での道徳教育の役割を正しく理解していることが、まず教師に求められているということです。
このように総論については.制度などが変わったときまず出題が集中し、徐々に細部に渡る問題が出されるようになってきます。来年は今年ほど出題が集中することはないと思われますが、それでも引き続き多くの問題が予想されます。また、何よりも改訂の細かい部分を正しく理解するためにも必要な基礎知識です。
◆学習指導要領は、「総則」が中心
教員試験で道徳について出題される場合は、もともと学習指導要領からの出題がほとんどで、その多くは「総則」からの出題でした。この傾向は、今年も同じだった。「総則」の「第1教育課程編成の一般方針」の第2項では、道徳教育について述べられています。ここからの出題が最も多いのはこれまで同様ですが、改訂された学習指導要領では、「総則」の「第4指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」の第3項に「道徳教育を進めるに当たっては,次の事項に配慮するものとする。」として、4つの項目が示されています。今年は、この部分からの出題も目立ちました。ここからの出題は来年以降増えると予測できます。今年は、「特別の教科 道徳」の からの出題はほとんどありませんでした。
◆今年の出題のまとめ
3番目の改訂の内容について、オリジナルの問題文などで出題されるケースはあまり多くありませんでした。出題された場合でも、簡単な正誤問題がほとんどで、問題文も完全なオリジナルのものは少なく、色々な資料の引用が多くありました。特に今年3月に文科省から出された「道徳教育の抜本的改善・充実」などからの引用が多数ありました。
今年の出題全体を見ると、中教審答申や改訂された学習指導要領の「総則」から基本的な問題を出題し、細かい問題は来年以降に出そう、といった出題者の意図が感じられました。
◆来年は狙われるのはココ!
まず、中教審の答申も引き続き出題されると予想されます。ただ、今年に比べれば減少すると思われます。特に、今年多かった「Ⅰ道徳教育の改善の方向性」からの引用は減少し、「2 道徳に係る教育過程の改善方策」などの細かい内容の出題へと変化することが予想されます。
それ以上に多くの出題が予想されるのは、学習指導要領自体からの出題です。相変わらず「総則」から出題されますが、「第1 教育過程編成の一般方針」よりも、「第4 指導計画の作成等に当たって配慮するべき事項」からの出題が増えると思われます。また、改訂のポイントなどについて細かく出題されることも予想されるので、「道徳教育の抜本的改善・充実」などについては、確実に覚えておきましょう。