採用される『志願書』の書き方
-2015.11.5-
少しずつ教員採用試験の日程、特に出願期間は早まる傾向にありますが、試験はすでに出願するところから始まっています。提出書類も自治体によって志願書だけでなく様々な書類の提出が求められます。その中でも自己アピール文や自己紹介書などは筆記試験の答案と同じくらい重要なものです。全てが面接試験のための重要な資料であり、最終的には合格者を決定するための大きな要素の一つと言えます。提出書類すべてが試験科目の一つと考えて、慎重に揃えて提出しましょう。
◆早まる日程、必ず確認を!
ブロック毎に統一されていた1次試験は、最近独自スケジュールで実施する自治体が少しずつ増えてきました。新潟県や岡山県などは近隣の自治体と異なる日程で行うようになりました。また、若干ずつですが教員採用試験のスケジュールは早くなっています。そのため、募集要項の配布も、志願書の受付期間も早まっています。日程を確認し、絶対に間違いのないようにしましょう。今年は3月中に募集要項の配布を開始した自治体もありました。
まず気を付けたいのは、願書の受付期間です。ゴールデンウィーク明けにはもう締切となる自治体もあります。自治体によっては逆に繰り下げている場合もあり、何度か教員試験に挑戦している人ほど、受付期間を間違わないように確認しておきましょう。ほとんどの自治体が、サイト上に詳細を掲載していますし、募集要項等もダウンロードできるので、時々チェックする習慣をつけておきましょう。
◆まず出願方法のチェック!
募集要項を入手したら、すぐに確認すべき、重要なことは、出願期間と共に出願方法の確認です。自治体によっても大きく異なり、同じ自治体でも年度によって大きく変更されることもあります。今回に続いて受験する人も、細かい部分まで確認しましょう。最近は変更も多く、変更点は早めに教育委員会のサイトで公表している場合が多いです。
出願には持参・郵送・電子申請などがありますが、自治体によっ
ては原則一つの方法しか認めていない場合もあります。また、出願
方法により、締切日が違うケースがほとんど(電子申請は締切が
早い)なので特に気をつけましょう。
◆提出書類は間違えない!
次に確認すべき事は、出願時の提出書類です。これは、自治体によっても大きく異なり、年度によって変更されることもあります。
一般的には提出書類の主なものには次のようなものがあります。
・志願書
・免許状・授与証明書のコピー
・成績証明書
・卒業・見込み・証明書
・人物証明書
・自己アピール文(自己PR文)
主要なものは以上ですが、志願書だけが必要な自治体もあれば、これらすべてが出願時に必要な場合もあります。また、出願時と一
次試験時、二次試験時と数回に分けて提出する場合もあります。受
験予定県の募集要項が公表されたら、ただちに確認しておきましょう。
証明書の類は事務的に揃えればいいものですが、志願書自
体や自己アピール文などは書き方や書く内容によって、その後
の試験に大きく影響してくることになります。たとえ志願書だけを
提出するような場合でも、志願票の記入欄に「志望理由」や「教育に生かせるこれまでの活動」などを書かなければならない場合は自己アピール文などと全く同じです。何度も書いてみて、自分なりに満足の出来るものを提出するように準備しておきましょう。また、特別選考枠での出願は、細心の注意が必要です。一般受験とは提出書類が異なり、選考枠によってもかなり異なるので、しっかり確認する必要があります。
◆志願書・自己アピール文の書き方
電子申請が増えてはいますが、事務的に記入できる志願書は少
なくなってきています。志望理由だけではなく、どんな教師にな
りたいか、趣味・特技、前職の退職理由などを書く欄まで登場
してきました。どのように書けば良い印象になるか、自己PRと言
っても、一体何を書いたらいいのか、わからない人も多いでしょう。
特に、実際に書こうとすると、志望理由などの欄があまりに小
さく、どのくらいの大きさの字で、何行くらいにまとめればい
いか悩んでしまう人も少なくありません。
意外と人物評価に占める志願書の印象の割合は大きいです。何し
ろ試験官から見れば、はじめて受験生と接触する場面です。
その印象が後まで影響してしまうのも仕方ないところです。読み
やすい丁寧な字で簡潔に書いてあれば、それなりの性格だろうと期待するし、汚い字で、しかも意味の分かりにくいことがいくつも書いてあれば、最初から期待されずに、面接でもろくに質問されずに終わってしまうこともあります。
教員採用試験では、筆記試験だけでなく論文・面接・討論・実技・模擬授業、スピーチなどいくつもの試験科目の結果から総合的に教師としての適性を判断し、合格者を決めています。ペ
ーパー試験だけで高得点を取っても、それだけで採用できるわ
けではなく、人柄がいいだけでも採用されません。専門知識もあ
り、一般的な教養も豊富で、指導力もあり、協調性もあり、豊
かな心を持っているなど、総合的にある一定水準以上でなくて
はなりません。
提出書類の内容もそれらを判断する大きな材料であることを
忘れてはいけません。特に採用者側から見れば志願票や自己紹介
書などが受験生の第一印象となるのです。ここで他の受験生
に差を付けられたら、大きなハンデとなってしまいます。
◆志願書の書き方の原則
1.真実を正直に書く
志願書の前半は、いわゆる履歴書の内容です。事務的に書
くことがほとんどで、この場合は、真実をそのまま書かなけれ
ばなりません。経歴詐称はタブーです。部活動・クラブ活動・
ボランティア活動や実績も正直に書かなければなりません。ただ、
書きたい実績がたくさんあり、小さい枠に、小さい字でびっし
りと書く人もいるが、やはり極端な書き方は、むしろマイナス
イメージになるので気をつけましょう。
2.枠の大きさを考えて書く
当たり前のことではありますが、志願票のそれぞれの枠からはみ
出して書いたり、枠の半分くらいしか書かなかったり、枠内には収まっていますが読みにくいくらい文字が小さい場合など、あきらかにマイナスポイントとなります。ところが、意外にこのような志願票は多いのです。他の受験生の志願票と比較することがあまり出来ないので、どうしても自分勝手な基準となってしまいがちです。論
文ではないので、簡潔にまとめなければなりません。しかも、わ
かりやすくなければなりません。わかりやすく、上手にまとめる
能力が見られていることを認識しなければなりません。
◆何故、自己アピールを書くのか、考えよう
志願書とは別に、所定の用紙に自己PRを書かなければなら
ない場合や、原稿用紙に自己アピール文などを書いて提出しなければならない場合もあります。負担に感じるかもしれませんが、面
接する前から自己PR文を提出できるということは、自分のア
ピールポイントを見せる絶好の機会と考えるべきです。
志願書にアピールポイントを書く欄があったり、自己PR文
を提出するのは、何故なのか考えてみましょう。
面接官は面接試験などでより多くの判断材料を受験生から引
き出すようにしたいですが、とにかく時間的な制約があり、聞ける
ことには限界があります。そのために自己PR文の提出等を求めて
いるのです。試験管が事前にこれを読むことによって予め受験生について、ある程度の予備知識を持って会うことができ、少し個性を知った上で本当に聞いておきたいことを事前に準備できるということで、面接の効率を大きく上げているのです。受験生にとってもでは面接試験だけでは時間に制約もあり、本当に見てもらいたい自分のパーソナリティを表現出来ずに終わってしまったり、聞いて欲しいことも聞いてもらえずに終わってしまうこともめずらしくはありません。
何問かの質問の中で、自分の個性、特に教師に適している面を最大限にアピールしなければならないのですが、あくまで発言は面接官から聞かれたことに答えるだけであり、聞いて欲しいことを質問される保証はありません。
そこでモノを言うのが自己PR文などの提出書類です。面
接試験は「自分の土俵に引き込む」ことが成功のポイントですが、その最大の武器が、これら自己PR文であり、自己紹介書であり、身上書です。
本当に見てもらいたい自分の部分をしっかり宣伝する数少ないチャンスだと考えておくことが大切です。
◆ポイントは「意欲」と「個性」そして「社会性」
まず「PRせよ」と言われている以上、遠慮する必要はありません。自分の長所をクローズアップすればいいのです。しかし、教員試験の受験生は意外とお人好しが多く、バランスを考えてか、長所と短所を両方書く人もいます。しかし、PRせよと言われて短所を書く必要などまったくありません。自分で一方的にPRできる数少ない機会なのですから、徹底的に自分の宣伝をすべきなのです。しかし、ここで慎重に考えるべきなのは、「何が長所なのか」という
ことです。あくまで、自分の性格がどのように教師に向いているのか、いい先生になりうる要素なのか、また自分のどの経験が教職に役に立つのか、じっくり考えてみる必要があります。アピールするものがポイントからズレていればPRにならなくなってしまいます。やはり効果的なのは、教職に対する「意欲」を上手に表現することです。しつこくなく、でもしっかりとポイントをまとめ、自分を表現する。その表現力がここで評価されるのです。次に必要なの
は、やはり「個性」です。趣味として読書や音楽鑑賞、スポーツ観戦を取り上げても、あまりに一般的であり、興味をそそる内容ではありません。なるべく他人とは違う点、しかも教師としてプラスと考えられる個性をアピールする必要があります。試験官が興味を持って面接試験でいろいろ聞いてくれれば、まさに「自分の土俵に引き込む」ことができます。ただし、これもバランスが大切で、あまり特殊なことを事細かく説明しすぎてしまえば、それは単なる「オタク」と思われるだけです。人間性の豊かさが求められているのですから、幅広い経験や対応力をアピールできなければプラスにはなりません。そして「社会性」も必要になってきます。社会性は、現場の教師に最も欠けていると、という指摘すらあります。とかく、不足しがちな「社会性」を十分に備えていると評価されれば、大
きな武器となります。その他、気を付けたいことは、「教育」を意
識しながら書くことです。どんなに素晴らしい人間かをアピールしても、教育と無関係では、教師としての適性を評価してはもらえません。自分の特徴が教育現場でどのように役に立つかを訴えるのが不可欠です。
◆アピール文は「まとめ方」で決まる
どんなことがアピール出来るか、アピールすればよいか、に
ついて理解して貰えたと思います。しかし、『文』である以上、読みやすく、わかりやすく上手にまとまっていることが必要です。アピールしたいことをただ羅列するだけでは「アピール文」とは言ええません。まず、最もアピールしたいことを中心に、やや詳しく説明し、それ以外にこんな事もアピールしたい、ということを付け加えるくらいでまとめるのがいいでしょう。中心に訴えるのは、最も特殊な経験や、最も感動したこと、最も自分の糧になったものなどがいいでしょう。抽象的な言葉を多用するのも避けましょう。どんなに「積極的」だと、しつこく言うよりも、一つの実例が最も説得力があったりするものです。