教育資料問題対策 重要教育資料入門『情報活用能力調査の結果』 平成27年03月24日 文部科学省
-2015.10.29-
最近の教職教養では、資料問題の比重が大変高くなっています。特に教育時事の問題では、新しい資料による出題が大変多いです。しかし、資料問題の傾向は変わりつつあります。このコーナーでは、今後出題が予想される重要な資料について紹介・解説していきます。
今回は文科省が3月に報告した「情報活用能力検査の結果」です。平成25年10月から26年1月にかけて実施した初めての調査をまとめたものです。小中学生は、整理された情報は読み取ることはできるが、複数のウェブページから特定の情報を見つけ出し、関連づけることに課題があるとしました。
Ⅰ 調査概要
コンピュータを使用した情報活用能力を測定する初めての調査
○ 調査の目的
児童生徒の情報活用能力育成に向けた施策の展開,学習指導の改善,教育課程の検討のための基礎資料を得ること。
○ 調査対象
国公私立の小学校第5学年児童(116校3343人)・中学校第2学年生徒(104校3338人)
※調査対象学校の校長や,小学校においては調査対象学級の担任1名,中学校は調査対象学級の担任, 各教科等の授業を担当している教員12名も質問紙調査の対象とした。
※層化2段クラスター(集落)抽出調査
○ 調査時期
平成25年10月~平成26年1月
○ 調査内容
情報活用能力の次の3つの観点について出題。(2単位時間で小問 16問に解答)
① 情報活用の実践力,② 情報の科 学的な理解,③ 情報社会に参画する態度
※児童生徒を対象とするコンピュータを使用した学習状況等についての質問調査,教員及び学校を対象とする指導状況や情報通信環境の整備状況等についての質問紙調査も実施。
Ⅲ 調査結果のポイント
【児童生徒の情報活用能力に関する傾向】
① 小学生について,整理された情報を読み取ることはできるが,複数のウェブページから目的に応じて,特定の情報を見つけ出し,関連付けることに課題がある。
また,情報を整理し,解釈することや受け手の状況に応じて情報発信することに課題がある。
② 中学生について,整理された情報を読み取ることはできるが,複数のウェブページから目的に応じて,特定の情報を見つけ出し,関連付けることに課題がある。
また,一覧表示された情報を整理・解釈することはできるが,複数ウェブページの情報を整理・解釈することや,受け手の状況に応じて情報発信することに課題がある。
③ 小学生については,自分に関する個人情報の保護について理解しているが,他人の写真をインターネット上に無断公表するなどの他人の情報の取扱いについての理解に課題がある。
中学生については,不正請求メールの危険性への対処についての理解に課題がある。
【情報活用能力調査結果の上位の学校群の傾向】
① 上位の学校群の教員は,下位の学校群と比べ,次のような授業の実施頻度が高い傾向にある。
・児童生徒に自分の考えを表現させること
・児童生徒に情報を整理させること
・児童生徒に情報手段の特性に応じた伝達及び円滑なコミュニケーションを行わせることなど
② 上位の学校群の児童生徒は,下位の学校群と比べ,学校で次のようなICT活用をしている頻度が高い傾向にある。
・情報を収集すること
・表やグラフを作成すること
・発表するためのスライドや資料を作成すること。
調査結果の概要
1.全体的な傾向
○ 調査問題の通過率で,小学校において最も高いものは71.9%,最も低いものは9.7%であり,中学校において最も高いものは89.5%,最も低いものは12.2%であった。
2. 3観点・能力別カテゴリー別傾向
「A:情報活用の実践力」の調査問題の結果
(情報を収集・読み取る力)
○ 小・中学生とも,整理された情報を読み取ることができている。
○ 小・中学生ともに,複数のウェブページから目的に応じて特定の情報を見つけ出し関連付けることに課題が見られる。
(情報を整理・解釈する力)
○ 小学校について,グラフの目盛りの値や間隔が違うと情報の伝わり方が変わることの理解や,複数情報から共通する観点を見つけ出して,整理・解釈することに課題がある。
○ 中学校について,一覧表示された複数の情報を,提示された条件をもとに整理・解釈することができている。一方、複数のウェブページから目的に応じて情報を整理・解釈することに課題がある。
(情報を処理する力)
○ 中学校について,グラフ化に必要なデータの範囲や目的に合うグラフ形式を判断し、処理することに課題がある。
(情報を発信・伝達する力)
○ 小・中学生ともに,扱う情報や情報手段の特性を理解し,受け手を念頭においた表現方法を工夫することに課題が見られる。
(情報手段の適切な活用)
○ ローマ字入力に関して、小学生については,濁音・半濁音,促音の組合せからなる単語の入力に時間を要している傾向がある。中学生については,ひらがなとアルファベットの入力切り替えに時間を要している傾向がある。
「B:情報の科学的な理解」の調査問題の結果
(情報手段の特性の理解)
○ 小学生について,電子掲示板に おける情報の伝わり方や広がり方について理解している。また,中学生について,SNSの特性についての理解に課題が見られる。
(情報手段の特性の理解〔計測・制御〕)
○ 中学生について,自動制御に関する情報処理の手順についての理解に課題が見られる。
「C:情報社会に参画する態度」の調査問題の結果
(情報や情報手段の役割や影響の理解〔自他の情報の取り扱い〕)
○ 小学生については,自分に関する個人情報の保護について理解しているが,他人の写真をインターネット上に無断公表するなどの他人の情報の取扱いについての理解に課題がある。
(情報モラルの必要性や情報に対する責任〔不正請求メールへの対応〕)
○ 中学生については,不正請求メ ールの危険性への対処についての理解に課題がある。
質問調査の結果概要
学校用質問紙
○「個人情報保護手段策定」「積極的な校務の情報化」などの学校の情報化に関わる取り組みは,小・中学校ともに高い傾向にある。
学校用質問紙
○ 情報活用能力の育成等に関わる取り組みのうち,校内研修や模擬授業などの実践的研修は,あまり行われていない傾向にある。
教師用質問紙
○ 小・中学校ともに,「情報の誤認性や危険性」「情報社会のルール」「健康面への注意」「情報発信者の責任」などの情報モラルに関する項目について指導できると回答している教員の割合が高い傾向にある。
○「情報活用能力を育成する授業の実施状況」に関して,「週1回以上」実施している教員は,小・中学校ともに1割に満たない。
児童生徒用質問調査
○ 学校におけるICTの使用状況につ いて,「ほぼ毎日利用している」,「ときどき利用している」の割合をみると,情報収集については,小・中学生ともに約6割であるが,それ以外の資料作成や発表等での使用については,1~4割程度である。
児童生徒用質問調査
○「ICT活用の自己評価」に関して,情報検索やキーボード入力が得意と回答している児童生徒の割合が高い傾向にある。一方,パソコンでの発表資料作成,表・グラフ作成,発表を得意と回答している児童生徒の割合は低い傾向にある。