人権教育の出題分析と対策
-2015.9.24-
教員試験における、人権教育の出題は、人権教育についての資料を中心に、児童虐待や男女共同参画社会、いじめに関する問題など様々な人権問題について出題が広がっています。
教育原理の分野だけでなく法規や教育史も含んだ総合的な出題も多いです。効率よく『人権教育』を学習する方法を見ておきましょう。
■人権教育の傾向
人権教育に関する出題は、これまでは西日本では多く、東日本では多くありませんでした。しかし、ここ数年東日本での出題は若干増加し、西日本での出題数はやや減少しているので、平均的な出題になってきました。ただ、ほとんど出題されていない自治体と、必ず毎年出される自治体と分かれるので、受験県の傾向は必ず確認しておきましょう。
出題内容としては、「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]からの出題が最も多く、次に「人権教育・啓発に関する基本計画」や 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」などを中心とした出題となっています。しかし最近少しずつ出題範囲そのものが広がる傾向にあります。それは、出題される資料が多くなっているだけでなく児童虐待やいじめの問題、特にインターネット等による人権の侵害などが社会問題としてクローズアップされるのに伴い、教員試験でも、単なる人権教育についての資料問題だけでなく、人権に関するさまざまな内容や、多様な形式の問題が出されるようになってきた、ということです。
■出題分類別対策
出題内容を大きく分類すると、①人権教育の歴史などの問題、②資料を中心とした出題、③自治体の「人権教育基本方針」などについての出題、④児童虐待・男女共同参画・障害者支援・犯罪被害者支援など、に分けられます。
①以前は多くありましたが、最近はかなり減少しています。しかし、昭和40年の「同和対策審議会答申」なども、いまだに出題されるときもあるので、同和教育から人権教育へと、その変遷は確認しておきましょう。
②最近の教育試験では、この形式が出題の中心となっています。 出題される資料は、「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年閣議決定)、「人権教育・啓発白書」、専門家会議の「人権教育の指導方法等の在り方について」(第三次とりまとめ)、そして 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」などが繰り返し出題されています。「人権教育の推進に関する取組状況の調査結果について(平成25年10月)」まで見ておきましょう。
③西日本を中心に、例年多くの出題が見られます。各自治体が 「人権教育基本方針」を整備してからは、教員試験での出題も定着してきました。但し、国の「人権教育・啓発に関する基本計画」など②で紹介した資料から1問、自治体の「基本方針」から1問と、複数出題する自治体も多く、違いを把握しながら、資料に目を通しておきましょう。
④最近増えている出題形式です。児童虐待に関する問題などを中心に、人権・権利全般から出題されています。「児童虐待防止法」や「児童福祉法」「児童の権利条約」「障害者基本法」など法律からの出題も多く、憲法や教育基本法などの権利に関する規定などと合わせて出るケースも多いです。また、一般的な人権に関する問題との融合問題などが増えてきています。児童虐待については特に出題が多いので、その出題内容は必ず確認しておきましょう。
■児童虐待の出題内容
児童虐待についての問題は、多くの自治体で出題されており、増える傾向にあります。これは、児童虐待の事件が後を絶たないことが、背景にあります。そのため、文部科学省や厚生労働省からもいろいろな資料が頻繁に出され、試験の問題にも影響しているのです。
児童虐待に関する出題については、「児童虐待の防止等に関する法律」に関する問題、文部科学省や厚生労働省から出された資料による問題、そして児童虐待に関する正誤問題の3つに分類できます。法律に関する出題は、他の教育法規の問題とは異なり、他のいろいろな条文と一緒に出題されるのではなく、児童虐待防止法からの出題であることを前提とした空欄補充問題等が多いです。従って、教育法規の問題として、他の法規と合わせて対策を立てるのではなく、児童虐待に関する問題としての対策が必要です。
資料については、平成22年1月の「児童虐待防止に向けた学校等における適切な対応の徹底について(通知)」と、平成22年3月の「児童虐待の防止等のための学校、教育委員会等の的確な対応について」も出題されています。
正誤問題などは、これら「児童虐待防止法」と資料の内容と最近の状況等を理解していれば、容易に正解できる問題ばかりなので、対策としては、同様に法律と資料の把握が必要です。 また、厚生労働省がまとめている児童虐待に関する統計や実態なども把握しておきましょう。
■人権教育の意味と問われていること
まずは、人権問題とは何か、正しく知っておく必要があるでしょう。
基本計画では「現在及び将来にわたって人権擁護を推進していく上で、特に、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者やハンセン病患者等をめぐる様々な人権問題は重要な課題となっており」、また、「犯罪被害者及びその家族の人権問題に対する社会的関心が大きな高まりを見せており、刑事手続等における犯罪被害者等への配慮といった問題に加え、マスメディアの犯罪被害者等に関する報道によるプライバシー侵害、名誉毀損、過剰な取材による私生活の平穏の侵害等の問題が生じている」ことが指摘されています。
人権教育については「人権教育の指導方法等の在り方について」や「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」などから、その基本についてまとめた上で、教師になってからの実践についても考えておきましょう。論文対策にも必要です。