合格論文の書き方
-2015.8.27-
論文試験は合否を左右する重要な試験科目であることは周知の事と思います。ですが、試験の実施方法については自治体によって大きく異なります。自分の場合はどのような準備をすればいいのかまだ迷っている人も少なくないようです。
当然、論文の得点をアップするのは一朝一夕にはいきません。
■教員試験で求められている論文
論文の試験について、各教育委員会が実施する教員採用試験では、「小論文」または「論文試験」として実施しており、要項に「作文試験」や「論作文」としている自治体はありません。「論文試験」と「作文試験」では、当然ねらいや評価基準が違います。従って、「論作文」という認識では、やや採点者とのズレが生じる可能性があります。決して「作文」でないことは、はっきり認識しておきましょう。
特に、最近、教員試験の論文試験の傾向や形式には大きな変化が見られ、出題テーマの難易度も上がっており、要求される論文の質も高くなっています。
試験時間、 字数については自治体によって様々です。 平成27年度については、論文は68自治体のうち47の自治体で実施されており、一次で実施している自治体は約三分の一、他は二次で実施しています。二次で実施する自治体が多いのは、それだけ論文の採点に時間を費やすためで、結果が最終合否に直接影響すると言うことです。
◆論文試験の特徴
論文試験も、時事的なテーマが多く、現在教育現場で課題になっていることが取りあげられることも少なくありません。「いじめの問題」「携帯・スマホ等、情報モラル教育について」などです。
最近の出題の傾向として、もう一つ顕著なのは、各自治体の教育目標や現状や課題などを踏まえた上で論述させる問題です。「本県の教育目標には~があるが、……」といったテーマや、「~について、本県の現状を踏まえて述べなさい。」といったものなどです。各自治体の調査結果や統計などのグラフが提示される場合もあります。単に、自分の考えをまとめたり、一般論でまとめたりするだけではなく、受験県の現状を正しく認識したうえで、教師になってからどう取り組んでいくつもりかを問うものです。
このような視点は、どの自治体を受験する場合でも必要だと思われます。たとえ、抽象的なテーマでも、普遍的なテーマでも、受験する県の現状に触れながら論じることは、いい評価をもらうコツの一つと言えるでしょう。
◆教員試験の論文に求められるもの
実際の課題を見ても、最近ほとんどの場合、「このことについてあなたはどのように考えますか、そして教師としてどのように取り組んでいくか具体的に述べなさい」や、「~とは何か、またそのためにあなたはどのような努力をするか述べなさい」 などとなっています。
これは論文を書くにあたってより具体的な条件が強調されたということであり、ある事例や教育界での出来事、最近の話題について、自分の考えをまとめるだけではなく、教師という立場でどう考えるか、教師になったらどのように実践しようと思うか、そのためにはどのような努力をするつもりか、それらをより具体的に述べなければならないということです。
簡単に分類すると、教師論・指導論・指導方法・一般的テーマなどに分けることはでき、取り上げられている課題は自治体によって様々ですが、要求されている書き方や、採点基準はどの自治体も大きな違いはありません。基本的な対策としてはどこを受験する場合でも同じです。また、課題に取り上げられているキーワードなどを見ても明らかに要求されるレベルが高くなっています。単に「○○についてあなたの考えを述べなさい」というものから、文部科学省の資料や中教審答申、自治体の重点教育施策などが示され、それらの主旨や背景、改革の方向性などを踏まえてどのような具体的実践が必要とされていて、どのような努力をする決意か、など論じなければなりません。明らかに、難易度の高い出題に変わってきていま
す。
その他の形式では、例えば資料を示し、その資料から考えられることをまとめる課題、ある文章を読んで、それについて自分の考えをまとめる、読解を含めた課題、一般的な抽象的課題、具体的指導法が出題されている場合もあり、教職教養の枠の中で、受験生の教育観をまとめさせる場合もあります。
◆具体的な対策
どんなテーマであっても、教師としての問題意識や決意を表現しなければなりませんが、その前提として、テーマに示された事柄について基礎的な知識がなければ正論は書けないし、説得力のある個性を表現することは不可能です。
特に時事的なテーマが出されることも多いため、新しい資料に目を通し、その内容をよく把握した上で引用したり、自分なりの解釈を説明したり出来るようにしておきましょう。ですが、実際に受験生の答案を見ると、このような対策を立てている人は多い様ですが、あまりにも個性が無くみんな同じような論文になってしまう傾向もあります。中教審の答申や文科省の資料で述べられていることをまるで自分の意見のように書き立て、最後は「児童・生徒の立場になって一緒に考えられる教師になるように努力するつもりである。」などと決まり文句のように結ぶ論文が非常に多いです。
間違ったことが書かれているわけでもないし、よくいろいろな資料を勉強してまとめているのでそれなりの評価はもらえますが、多くの人が同じようにまとめているため、個性が無く、印象に残らない論文となってしまいます。そこでまず次の順で練習をしてみましょう。
教育について最近話題になっていることやキーワードを正しく理解し、それが話題となっている背景も理解すること。例えば、「いじめ」に関すること、「道徳」の教科化について、「アクティブ・ラーニング」などです。できれば、受験する自治体の話題・現状・課題もしっかり把握しておきましょう。次に、それらを自分なりの言葉で説明できるようにしましょう。そして、それについて自分の考えをまとめることが重要です。
字数や形式は気にする必要はありません。このような練習を日頃からやっているかどうかが大きな差となってきます。必ずしも論文の形式で練習する必要はありませんが、最も重要で最も差がつく練習です。これを日頃からやっている前提で、次に実践的な論文を書く練習を計画的に進めます。
書く練習を進めるときに、わかりやすい文章表現になっているか、段落構成がしっかり組み立てられているか(序論・本論・結論の形式)、言いたいことが伝えられているか、教職への決意が表現されているか、などを自己チェックしてみましょう。
◆社会人枠・教職経験者枠の論文試験
社会人枠や教職経験者枠の受験生にとっては、一般枠以上に論文の出来が合否にストレートに影響します。論文で決まると言っても過言ではないでしょう。したがって一般枠の論文とは、要求されるもの、採点基準がかなり違っています。最近はテーマ(課題)が一般枠と異なる場合がほとんどです。特別枠のテーマは、答案作成の条件やテーマ自体がやや細かいため、求められている事やそのヒントがうかがえることもあり、むしろわかりやすいかもしれません。しかし、一般枠と同じテーマの場合でも、評価基準は若干違うので、気をつけましょう。当然ですが、受験生のこれまでの社会経験や教職経験を踏まえた答案でなければならなりません。
本人の意見や考え方、目指していくもの等が形成されるにあたり、これまでの経験がどのように影響しているかを表現しなくてはいけません。それがなければ、一般枠と同じような答案となり特別枠での受験の場合、かなりマイナスの要素となってしまいます。だからといって、これまで自分がやってきたことを、自慢げに長々と説明するのもよくありません。現在の自分を築いた背景としてさり気なく説明を加えるように出来れば主張する内容にも説得力が加わります。その上で、何故教師を目指しているのか、その背景がわかる答案が期待されています。
◆避けたい書き方
論文作成の練習を始めるに当たって、避けたい書き方を事前に知っておいた方がいいでしょう。
◎小見出しやタイトルは?
長い論文の場合は小見出しやタイトルを付けることは、読みやすく書く方法のひとつかも知れませんが、教員試験の論文は長くても1200字で、平均的には800字くらいです。この程度の長さでの文章で小見出しを付けると、レポートの書き方になってしまいます。決して間違いではありませんが、小見出しを付けずに段落の構成で読みやすくした方が、高い評価がもらえることになります。
◎構成は「序論」「本論」「結論」
論文の構成は必ず「序論・本論・結論」です。「起承転結」ではありません。「起承転結」は随筆や者型の書き方です。論文の場合は「転」はなくてもいいのです。特に、字数に制限のある論文なので、簡潔にまとめなければ、いい論文にはなりません。
◎推敲しないとすぐわかる
なかなか推敲の習慣のあるひとは少ないです。しかし、推敲せずに提出された論文は、かならずわかってしまいます。主語が2つある文や助詞(て・に・を・は)が間違っている文、それに誤字や脱字も推敲すれば、ほとんど防げるものばかりです。答案を書く時間の最後5分は、必ず推敲する時間にしましょう。
◎敬体と常体が混ざったら
敬体、つまり「です・ます調」と常体の「である調」が混在している答案も、意外と珍しくありません。これは文章として大きな減点となってしまいます。どちらでも構わないので、必ず統一しましょう。混在するのは、慣れていない方で書こうとした場合が多いです。無理に敬体を使う必要はないので、慣れている方で書きましょう。
◎あくまで試験の答案である
最後まで、試験の答案であることは忘れないようにしましょう。書いているうちに、強い主張になってしまう人もいますが、自分の意見を書く論文である以前に、試験の答案です。
■論文作成練習の注意事項
○まず、正しい原稿用紙の使い方を復習する
~意外とルールを忘れている人が多い。必ず減点されることなので、確実にしておきましょう。
○必ず「序論」「本論」「結論」の構成とする。
~論文であり、単なる作文ではないので構成は大変重要
○答申・資料の主旨を自分の意見として論述しない。
~少しだけオリジナリティを加えてみましょう。評論家のような答案では、確実に不合格となります。
○誰もが経験していることは具体例として紹介しない
~具体例として紹介するのはあまり普通には体験しないことが説得力を増します。
○具体例はなるべく過去のものではなく、未来のこと
~必ず具体的な説明が必要ですが、自分の恩師の実践例や講師として今やっていることは説得力はありません。
○抽象的な決意表明に終わらせない
~頑張る・努力する等の言葉だけではやる気は感じません。ポイントは個性! 児童・生徒に何を要求するかではなく、自分自身がどんな決意をしているか書くことです。