『特別支援教育』出題分析と対策
-2015.7.23-
特別支援教育の出題は、すでに教職教養の一つの領域として固定されたと言えるくらい高い出題率となっています。まして、教育原理・教育法規・教育心理等いくつもの領域にまたがった内容となっています。しっかりとした対策が必要なので、今回はその傾向と対策をまとめてみました。
■特別支援教育の出題パターン
特別支援教育に関する出題は、特別支援学校の志望者だけでなく、すべての教職教養に必ず出題されるようになりました。増え続けた出題数も固定されてきて、出題内容の傾向もだいぶ固定化してきたと言えます。難易度も少しずつ上昇しており、確実な対策が必要です。
これまでの教職教養の問題は教育原理・教育法規・教育心理・教育史に大分類できますが、特別支援教育についての問題は、これらの領域すべての要素を含む問題になっています。したがって、特別支援教育はこれまでのような分類で学習するのではなく、総合的な対策が必要となっています。では、出題の内容を見ていきましょう。
出題のパターンはわりと限られています。最近の出題問題を分類すると、次の4つに分類されます。
一・法規に関する出題
二・資料による出題
三・心理・発達障害に関する問題
四・最近の動向など総合問題
この4つの出題の割合は、年によって若干の違いがあり、最近は心理に関する出題は減少傾向にあり、資料・法規に関する問題の比率が高くなっていますが、どちらにしても、4つの出題率にそれほど大きな差はありません。均等に学習すべきでしょう。パターン別にその傾向を見てみましょう。
■資料問題
一般的な資料問題は、資料が公表た直後は出題が多いですが、徐々に減少するものです。ところが特別支援教育については、決して新しいとは言えない資料も多く出題されています。
特別支援教育の理念について端的に説明している「特別支援教育の推進について(局長通知)」 は平成19年4月に出されたものですが、今でも出題されており、これからも続くと思われます。内容は、「1.特別支援教育の理念 2.校長の責務 3.特別支
援教育を行うための体制の整備及び必要な取組 4.特別支援学校における取組 5.教育委員会等における支援 6.保護者からの相談への対応や早期からの連携 7.教育活動等を行う際の留意事項等」から構成されており、出題は「3.特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組」が特に多く、「4.特別支援学校における取組」や「7.教育活動等を行う際の留意事項等」などからも出題されています。「3.特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組」には「(1)特別支援教育に関する校内委員会の設置(2)実態把握 (3)特別支援教育コーディネーターの指名(4)関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用(5)「個別の指導計画」の作成(6)教員の専門性の向上」の6項目が示されていますが、(1) (3) (4)を中心に全体から出題されています。まさに特別支援教育の基礎・基本がまとまっている資料です。
最近出題が多いのは、中教審の特別委員会の報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」です。これは、障害者の権利に関する条約の国連における採択、政府の障害者制度改革の動き、中央教育審議会での審議、障害者基本法の改正等について記述しています。
他の資料では「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」(平成25年10月)、「障害のある児童生徒の教材の充実について(報告)」 (平成25年8月)「特別支援教育に関する調査の結果について」(平成23年5月)や「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)などがあります。
なお、平成27年2月25日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」が内閣府から公表されたので、今年はここからの出題も多くはないですが予想されます。
■法規に関する問題
特別支援教育に関する法規の問題も、出題される法律は限定されています。最も基本となる、教育基本法第4条第2項を中心に、学校教育法第八章の特別支援教育から第72条~81条、特に72条・74四条・76条・81条などは出題率が高いです。また、学校教育法施行令第22条の3はこれまで、特別支援学校の専門教養では出題されていても、教職教養では必要ありませんでしたが、最近は教職教養でも出題された自治体があるので、確認しておきましょう。また、学校教育法施行規則一四〇条や、特別支援学校への就学奨励に関する法律なども出題されるようになっており、その範囲は広がっています。
■発達障害に関する問題
発達障害は、本来教育心理に分類される問題ですが、特別支援教育への制度の変更で対象となったLD、ADHD、高機能自閉症等が集中的に出題されています。発達障害者支援法などから、それぞれの定義なども出題されていますが、多いのは、それぞれの特徴などです。それぞれの定義、特徴などをまとめておく必要があるでしょう。
■総合問題
総合問題は、もちろん上記全ての要素を含んでいる問題ですが、特別支援教育の仕組みについての設問が多いです。総合問題の出題率は年々高くなっています。文科省のパンフレット「特別支援教育」等は必ずチェックしておく必要があるでしょう。ただし、難易度は決して高くないので、基本を確実にしておくことが最も重要です。