教育資料問題対策 重要教育資料入門 「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について(答申)」
-2015.5.7更新-
最近の教職教養では、資料問題の比重が大変多くなっています。
特に教育時事の問題では、新しい資料による出題が大変多いです。
しかし、資料問題の傾向は変わりつつあります。
このコーナーでは、今後出題が予想される重要な資料について紹介・解説をしていきます。
今回は、「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について(答申)」です。
学習指導要領の改定の方向性を理解するためにも重要な答申です。
子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について(答申)
平成26年12月22日 中央教育審議会
第1章 小中一貫教育の制度化及び総合的な推進方策について
第1節 小中一貫教育が取り組まれている背買
○全国各地で地域の実情に応じた小中一貫教育の取組が進められているが、それには以下のような背景があると考えられる。
・教育基本法、学校教育法の改正による義務教育の目的・目標規定の新設
・近年の教育内容の量的
・質的充実への対応
・児童生徒の発達の早期化等に関わる現象
・中学校進学時の不登校、いじめ等の急増など、「中1ギャップ」への対応
・少子化等に伴う学校の社会性育成機能の強化の必要性
現在、全国各地で地域の実情に応じた小中一貫教育の取組が進められている背景には様々な要素が存在している。
既に小中一貫教育に取り組んでいる学校では、以下の項目の一部又は全部が絡み合って、小中一貫教育を進める根拠となったり、小中一貫教育の実施形態に影響を与えていると考えられる。
1.義務教育の日的・目標
平成17年に、本審議会は、「新しい時代の義務教育を創造する(答申)」 として、現在の社会情勢の中求められる新たな義務教育の姿を示した。
これを受け、教育基本法が改正され、 第5条第2項に「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養う」という義務教育の目的が定められ、続く学校教育法の改正においても小・中学校共通の目標として義務教育の目標規定が新設 (第21粂)された。
また、平成20年に告示された学習指導要領においても、小学校学習指導要領に参考として中学校学習指導要領の全文が記載され、中学校学習指導要領にも参考として小学校学習指導要領の全文が記載されるなど、学校段階間の連携を促進するための工夫が講じられた。
こうした中、小・中学校が共に義務教育の一環を形成する学校として学習指導や生徒指導において互いに協力するという観点から、双方の教職員が義務教育9年間の全体像を把握し、系統性・連続性に配慮した教育に取り組む機運が高まり、各地域の実情に応じた小中一貫教育の実践が増加してきている。
2.教育内容や学習活動の量的・質的充実への対応
平成20年の学習指導要領改訂においては、競争と技術革新が絶え間なく起こり、幅広い知識と柔軟な思考力に基づき新たな知や価値を創造する能力が求められている現代の社会情勢を踏まえ、知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視して、教科によっては授業時数を実質的に1割程度増加させ、教育内容を質・量とも充実させた。
例えば、外国語によるコミュニケ ーション能力を育成するため、小学校高学年への外国語活動の導入と併せ、中学校の授業時数の増加(各学年とも年間105時間から140時間に増加)や4技能(「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」) の総合的な充実等を図っている。
また、科学技術の進展等の中で、理数教育の国際的な通用性が一層問われていることを踏まえ、教育内容の系統性を重視し、数学的な思考力・判断力・表現力を育成するための指導内容や活動を具体的に示したり、科学的な思考力・判断力・表現力を育成するための学習活動等を充実したりしている。
このような教育内容や学習活動の量的・質的充実に対応して、小・中学校の教員が連携して、小学校高学年での専門的な指導の充実や、児童生徒のつまずきやすい学習内容についての長期的な視点に立ったきめ細かな指導などの学習指導の工夫に取り組んでいる例も見られる。
これらを行いやすくするため、それぞれの学校等の実情に応じた形で小中一貫教育の推進が図られているものと考えられる。
3.発達の早期化等に関わる現象
小中一貫教育を導入することにより、現行制度下でも、6-3とは異なる学年段階の区切りを設けている例があるが、そういった取組が必要とされる背景の一つとして、児童生徒の生理的成熟の早期化も指摘されている。
6-3制が導入された昭和20年代前半と比較すると、例えば、平成25年の児童生徒の身長の伸びや体重の伸びの大きい時期は、昭和23年当時よりも2年程度早まっている。
また、 女子の平均初潮年齢についても、昭和の初めと比べて2年程度早まるなど、思春期の到来時期が早まっているのではないかとの指摘もある。
また、「学校の楽しさ」、「教科や活動の時間の好き嫌い」について、小学校4年生から5年生に上がる段階においても肯定的回答をする児童の割合が下がる傾向があることや、「自分が周りの人(家族や友達)から認められていると思いますか」という自尊感情に関わる質問に対し、小学校高学年から急に否定的な回答が多くなるといった調査結果もある。
経験的な理解で対応できる学習内容から理論的・抽象的な理解が必要な学習内容への橋渡しが必ずしも円滑に行われていないとの指摘もある。
この時期の児童生徒は成長の個人差も大きいが、小学校4~5年生頃に児童生徒にとっての発達上の段差が存在しているとの指摘や、いわゆる「中1ギャップ」と呼ばれる現象の芽は既に小学校高学年から生じているとの分析もある。
このため、興味関心や個性への対応の重視、指導の専門性の強化といった、従来であれば中学校段階の指導の特質とされてきたものを、一定程度小学校段階に導入する取組も見られるようになっている。
また、こうした児童生徒の様々な成長の段差に適切に対応する等の観点から、現行の6-3制の下で、4-3-2や5-4といった学年段階の区切りを設け、区切りごとに指導の重点を定めて一貫教育を実施する取組も増えている。
4.いわゆる「中1ギャップへの対応
各種調査によれば、いじめの認知件数、不登校児童生徒数、暴力行為の加害児童生徒数が中学校1年生になったときに大幅に増えるなど、児童が小学校から中学校への進学において、新しい環境での学習や生活に不適応を起こすいわゆる「中1ギャップ」が指摘されている。
加えて、「授業の理解度」「学校の楽しさ」「教科や活動の時間の好き嫌い」について、中学生になると肯定的回答をする生徒の割合が下がる傾向にあることや、「学習上の悩み」として、「上手な勉強の仕方がわからない」と回答する児童生徒数が増える傾向が明らかになっている。
しばしば、小・中学校は同一設置者が両校種を設置していることが多く、それらは連携して当然という声も聞かれるが、実際の小・中学校における教育活動の間には、中等教育段階を構成する学校種である中学校・高等学校間よりも大きな差がある。
こうした違いは、必ずしもその全てが法令や学習指導要領等に規定されている事柄ではなく、長い歴史の中で文化として積み上げられてきた部分も大きい。
小学校での指導と中学校での指導に発達段階に応じた独自性があることは当然であり、適度の段差が学校段階間に存在することの教育効果も大きいものと考えられる一方、これらの小・中学校間の教育活動の差異が、発達状況とのずれなどから過度なものとなる場合、いわゆる「中1ギャップ」の背景となり得ることが指摘されている。
このような児童生徒の状況に応じて、小学校から中学校への進学に際して、生徒が体験する段差に配慮し、その間の接続をより円滑なものとするために、小・中学校間での柔軟な教育課程の編成や学習指導の工夫を行う観点から小中一貫教育が取り組まれるようになっている。
5.地域コミュニティの核としての学校こおける社会性育成機能の強化の必要性
子供たちの社会性の育成をめぐる社会環境の変化への対応の必要性も、小中一貫教育の取組が推進されている背景の一つであると言える。
地域コミュニティの衰退、三世代同居の減少、共働き世帯や一人親世帯の増加、世帯当たりの子供の数の減少といった様々な背景の中で、家庭や地域における子供の社会性育成機能が弱まっているとの指摘がある。
また、少子化等に伴い、単独の小学校及び中学校では十分な集団規模を確保できない地域も多くなってきている。
こうした中、異学年交流を活発化させたり、より多くの多様な教師が児童生徒たちに関わる体制を確保したり、地域の教育力を積極的に学校に取り入れることへのニーズが高まり、小中一貫教育の導入が行われている現状がある。
また、高い社会性育成効果が見込める部活動の充実の観点から、小中一貫教育に取り組む中で学年段階の区切りを弾力化し、小学校高学年から部活動を導入することが効果的ではないかとの指摘もある。
第2章 意欲や能力に応じた学びの発展のための制度の柔軟化について
第1節 飛び入学者に対する高等学校の卒業程度認定制度の創設
○現在、高等学校中途退学扱いとなっている大学への飛び入学者については、大学入学後の進路変更等に対応できるよう、大学での一定の単位の修得状況を基に、文部科学大臣が高等学校卒業と同等以上の学力を有することを認定する制度を創設し、高等学校卒業と同等の法的地位、社会的評価が得られるようにする。
○具体的には、高等学校での50単位以上の修得及び大学での16単位以上の修得と、それぞれ修得した単位の分野が著しく偏っていないことを確認することにより、文部科学大臣が認定を行う。
1.制度の必要性
法第56条において、高等学校の修業年限は3年(定時制・通信制は3年以上)、規則第96条において、高等学校の全課程の修了を認めるに当たっては74単位以上を修得した者について行わなければならないことが規定されている一方、法第90条第2項及び規則第151条から第154条まで等において、高等学校に2年以上在籍し、特定の分野において特に優れた資質を有する者が大学へ飛び入学できる旨が規定されている。
しかしながら、現行制度では、飛び入学者は、高等学校を中途退学して大学へ入学することとなっており、大学入学後に大学を中途退学するなどして進路変更をしようとするとき、当該学生は高等学校卒業の扱いとならず、就職や資格試験等の受験において困難が生じるとともに、 飛び入学の活用が促進されない一因ともなっている。
(中略)
今後、少子高齢化が進む一方で、グローバル化の進展に伴い激化する国際競争の中で、新たなイノベーションを創出し、国際的に活躍できる人材の育成は極めて重要であり、そのためには、学習者の目的意識や意欲、能力に応じて、自らの学びを発展させ、様々な分野への挑戦を可能とすることが必要である。
このような中で、飛び入学制度の活用を図っていくことは重要であり、その際、特に優れた資質を有する者が安心して大学に進学し、その資質を十分に伸ばすようにしなければならない。
そのためには、上記の意見等も総合的に勘案しつつ、飛び入学者が大学入学後に、進路変更する際に、通常の高等学校卒業又はそれと同等の法的地位や社会的評価が得られるための妥当な仕組みを構築することが必要である。
2.大臣による認定制度の創設
飛び入学者については、飛び入学時点では、特定の分野では優れた資質があることが確認できるが、当該分野以外の資質については確認できていない。
しかし、飛び入学の要件として、高等学校に2年以上在籍することが求められており、通常であれば高等学校3年間の課程のうち、一定の単位は修得している状態で入学することとなる。
また、通信制の大学においては、高等学校を卒業した者でなくても、通信教育において、科目等履修生等として人文、社会、自然科学の3分野にわたって16単位相当以上の授業科目を履修した者について、当該大学において高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる場合には、規則第150条第7号の規定により、当該大学の入学資格があると認めることが可能である。
そこで、それらを踏まえて、飛び入学者について、高等学校での学修状況に加えて、大学での一定期間の学修状況を基に、高等学校を卒業した者と同等以上の学力が備わったかを確認することとする。