「教育課程」次期学習指導要領の改善 教員採用試験への影響
-2015.2.26更新-
文科大臣が中教審総会で「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方」について諮問しました。
いよいよ、次期学習指導要領改訂に向けて動き出したのです。
今回の改訂は、次期が早まっただけでなく学習指導要領の構造自体も変更されるかもしれません。
大幅の改定です。
教員試験には、どう影響するのか見ておきましょう。
◆「次期学習指導要領」へいよいよ動き出す!
文部科学大臣は先月、中央教育審議会に「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方」と題する諮問を行いました。
これによって、中央教育審議会は次期 学習指導要領の改訂にむけて本 格的な審議を開始することとなりました。
今回の改訂は、これまでと異なる面がいくつかあります。
そのために教員採用試験への影響も、これまでの改訂時期よりもはるかに大きな影響が予想されます。
まずは、どの点がこれまでの改訂と異なるのか、整理しておきましょう。
○改訂のサイクルの短縮
学習指導要領は、これまではほぼ10年に1度の間隔で改訂されてきました。
しかし、学校や教育をめぐる環境の変化は著しく、前回の改定(平成20年版)のときも、改訂時期の前倒しが検討されましたが、なかなか実現できませんでした。
ところが、今回は、1年早く諮問し、2年早い改訂を行う予定です。
まして、内容も大幅改定になる見通しで、教育現場への負担も大きくなるのが予想されます。
新規採用の教員には、あらかじめ充分な主旨の理解が要求されることになります。
○諮問の前から、個別の改訂内容の検討がされている
今回は、正式に中教審に諮問する以前から、個別の改訂内容が既に提示されています。
道徳の 「特別な教科」への格上げや英語の授業時数増加、高校での日本史の必修化など、具体的な変更事項がすでに広く報道されています。
特に「道徳」については、先行して中教審での審議が行われ、先日答申されています。
英語教育についても、別の有識者会議で検討されてきました。
このような形での学習指導要領の改訂は異例です。
今回は短期間に大幅改訂を行うために、先行して検討されてきたことが大変多いです。
○学習指導専舘全体の構造について見直し
今回の改訂は、学習指導要領の構造自体を見直し、目標とすべき「育成すべき資質・能力」をまず念頭に置いて、学習指導要領のあり方を見直すと、文科省担当者が公表しています。
すでに文科省内に「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」が事前準備の形で論議を推し進めていて、その一部は公開されているものもあります。
これまで教科ごとに検討され、そのまま各教科等の目標・内容とされてきましたが、今回はまず「育成すべき資質・能力」を掲げて、それとの関連を十分踏まえたうえで各教科等の目標、内容、さらには方法等を決めていくというものです。
特に「何を教えるか」ではなく、「どのように教えるか」 という教育方法を重要するとしています。
◆次の教員試験にどう影響するか
通常、学習指導要領の改訂については、中教審の答申が出されると、一気に改訂についての出題となります。
しかし、今回は中教審の答申が28年度になる予定です。
27年夏の試験のときにはまだ答申も出されていません。
つまり、原則としてはまだ現行の学習指導要領による出題となります。
特に専門教養で出題されるのは、現行からなので、迷うことなく現行学習指導要領についてしっかりと理解しておかなければなりません。
特に専門教養では学習指導要領解説書からの出題も多いので、現行の内容について合わせて準備をしておきましょう。
ただし教職教養では事情が違ってきます。
もちろん現行の内容が出題される可能性も少なくないので、総則を中心にもう一度復習する必要はあるでしょう。
ところが、それだけで終わってしまってはいけません。
まず、中教審が「中間まとめ」や「審議経過報告」などを公表する可能性があります。
どの時期になるかはわかりまえんが、試験前(2015年5月まで)に出された場合は、出題される可能性は高いです。
これについては、報道または文科省のホームページなどをときどきチェックしなければなりません。
その上で、出された場合は内容の主旨をよく把握しなければならないのです。
中間まとめなどが出されなかった場合でも、今回は改訂についての材料が十分にあるため、何らかの形で出題されることが予想されます。
2014年10月の中教審答申「道徳に係る教育課程の改善等について」などがその代表であり、英語教育についての文科省の報告書なども含まれます。
そして、それ以上に重要なのが、今回の文部科学相の諮問文です。
今回は諮問の理由として長い説明が付いており、今回の改訂の方向性がわかりやすくなっています。
単に穴埋めの問題だけでなく、改訂の方向性についての正誤問題なども予想されます。
よく確認しておきましょう。
また、改訂についてのまさに作業段階での試験となるとき、これまでの例から見ると、過去の学習指導要領の変遷についての出題が増加する可能性が高いです。
これも十分に復習しておきましょう!
◆学習指導要領はどう変わるか!何が諮問されたのか
次期学習指導要領がどのように変わるか、はっきりしていることもあります。
既に審議が終了した「道徳」については、「特別な教科」となることで、新しい教科書作成へ動き出していますが、すぐには間に合わないことから、文科省作成の「私たちの道徳」など副読本が使用されます。
検定や採択等の期間を考えると検定教科書も揃って全面実施は18年になるでしょう。
「英語教育」については、小学校中学年が週1~2時間。高学年が2~3時間となります。
15分のモジュール学習の構想もあります。
中・高校はレベルアップされ、特に中学校は、授業が英語で行われるようになり、2018年度から段階的に先行実施することとしています。
「道徳」「英語」の他には、幼小教育の接続、高校で社会の仕組みを学ぶ新科目や日本史の必修化、特別支援教育では各教科の改善などについて、次期学習指導要領への見直しなどが中教審に諮られました。
しかし、諮問文によると、今回の改訂のキーワードは 「アクティブ・ラーニング」となりそうです。
諮問には、①教育目標・学習指導方法、学習評価の在り方を一体で捉える ②既存の教科・科目等の目標・内容を見直す ③評価方法の改善方策、などが盛り込まれました。
①では「多様な他者と協働しながら創造的に生きていくために必要な資質・能力をどのように捉えるか」や、「子どもが自ら課題を見つけて解決を図る主体的な学習『アクティブ・ラーニング』などの新しい指導方法はどうあるべきか」などが検討されます。
②は、高校教育で、教養や規範、自立した生活を身につける新科目について。国民投票法が改正され、平成30年6月21日から、満18歳以上で投票できます。
このことから、高卒段階で社会の一員となる責任を果たせるようにと、新科目を設けることについてどう考えるかが話し合われます。
また地理歴史科を見直し、日本史を必修化させることについて。そして、より高度な思考力・判断力・表現力を育成する新科目や、社会要請を踏まえた専門学科のカリキュラムの在り方なども検討課題として挙げられました。
体育・健康に関する教育内容の見直しにもふれ、2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機に、児童生徒の運動・スポーツに対する関心や好奇心を向上させるための内容についても議論を重ねていきます。
③では、学校種ごとの教育課程編成、実施、評価、改善の一連のカリキュラム・マネジメントの普及を図る方向。
さらにアクティブ・ラーニングなどの学習方法や新しい学びに対応した評価方法等の開発・普及が検討されます。