「生徒指導提要」の出題傾向
■「生徒指導提要」の出題状況
昨年の試験では7割弱の自治体で「生徒指導提要」が出題された。今年の出題を見ると、昨年ほどではないが、やはり多くの自治体で出題されている。
昨年並みの出題が予想されたが、生徒指導の問題として「いじめ」に関する出題が多かったため、その影響を受け、前年に比べ10~15%ほど減少した。
今年は、社会問題としても「いじめ」に関する事件などが大きく取り上げられ、文科省や教育委員会も緊急的な対策を立てたため、教員試験にも大きな影響を及ぼすことになった。
しかし、今後「いじめ」が沈静化したり、文科省等の方針に沿って対応することで、落ち着いてくれば、来年以降は「いじめ」に関する出題は、また減少し、「生徒指導提要」の出題が復活し、高出題率を維持することが充分に予想される。
一昨年までの教員試験で出題が最も集中したのは「第1章 生徒指導の意義と原理 第1節 生徒指導の意義と課題 1生徒指導の意義」だった。
生徒指導についての基本的な考えについての問題が多かった。
次に出題が多かったのは「第5章 教育相談 第1節 教言相談の意義」であった。
しかし、年々出題される範囲が広がり、昨年と今年の出題内容を集計すると1章~6章まで意外と広範囲で出題されており、一か所に集中ことも少なくなっている。
ただし、7章と8章からの出題はなく、1章~6章も節単位で見てみると、ねらわれやすい節はあるようだ。
したがって、これまで以上に傾向を細かく分析し、出題が増えている部分はしっかり確認しておく必要がありそうだ。
形式としては、依然として空欄補充が最も多いが、徐々に正誤問題も増えている。
■教育相談の出題と「生徒指導提要」
「第5章教育相談」も以前から比較的出題が多い部分である。元々、 教職教養では、教育相談についての出題も多かった。
以前は、教育心理の一領域として、教育相談の基本についての出題が中心であったが、「生徒指導提要」が発行されてからは、「生徒指導提要」からの出題が大幅に増えている。
この章には「教育相談の意義」「教育相談の体制づくり」「教育相談の進め方」等がわかりやすくまとめられており、教育相談についての正誤問題なども、「生徒指導提要」の主旨にしたがって回答する問題が今後も増えると思われる。
特に、図表51313に示された 「教育相談でも活用できる新たな手法等」について、用語と説明文を結び付ける問題なども、多くの問題が出題されている。
■「生徒指導提要」の今後の傾向と準備
これまで最も出題が多かったのは、「第1章生徒指導の意義と原理 第1節生徒指導の意義と課題」であった。
これは生徒指導の基本について記述されている部分であり、少しずつその比重は低くなっているが、それでも中心して出題されるこ とに変化はないと思われ、まず最初に充分理解していなければならない部分である。
逆に、少しずつ出題が増えてきているのが、比較的新しい課題についてまとめられた、第6章の「Ⅱ 個別の課題を抱える児童生徒への指導」についてである。
今後も出題が増加することが予想される。
全体的な対策としては、まだ「生徒指導提要」にほとんど目を通していない場合は、まず「第1章生徒 指導の意義と原理第1節生徒指導の意義と課題 1生徒指導の意義」をしっかり読んで理解するところから始めたい。
第二段階として、第五章の「教育相談」を熟読し、「教育相談でも活用できる新たな手法等」を理解しておかなければならない。
そして、第二章第一節・第六章、第三章の順に読み進めておくの が望ましいだろう。
本来生徒指導は、定義や理屈だけでなく、正しい実践ができなければ意味がないが、とりあえず採用試験では、「生徒指導提要」を基準とした問題がだされるので、何度も読み返し、把握していかなければならない。
■「生徒指導提要」の特色を理解しておこう
長い時間をかけて改訂された生徒指導の基本書として、どんな内容なのか、その性格も知っておきたい。
「生徒指導提要」の大きな特色は、 小学校における生徒指導についても対象と捉え、必要に応じて学校段階別に内容を書き分けたこと、学校種間の連携についても述べていること、複雑化・多様化する児童生徒をめぐる課題について、児童生徒全体への指導と、個別の課題ごとの指導の基本的な考え方について述べている、発達障害についての理解と支援の在り方についても盛り込んでいることなどであるが、まとめると次のようになる。
▽小学校から高校段階までの生徒指導の理論・考え方・実際の指導方法などについて、時代の変化に即して網羅的にまとめた基本書であること。
▽小学校での生徒指導についても対象ととらえて、必要に応じて学校段 階別に内容を書き分けていること。
▽学校全体では生徒指導を進めるための指導体制の在り方や、学校による組織的対応、学校種間や学校間の連携、関係機関などとの連携について述べていること。
▽時代の変化により複雑化・多様化する児童生徒の様々な課題に対しては、児童生徒全体への指導と、個別の課題を抱える児童生徒への指導の基本的な考え方とに分け、それぞれの指導を進めながら、相互に関係させることで効果を上げるものであることについて述べていること。
▽多様な個別課題について指導・対応の基本的な在り方について記述している。中でも発達障害については、近年の学校の取り組みの状況を反映し、発達障害に関する理解と支援の在り方について述べていること。
▽チーム支援や連携と協働について 述べていること、などである。
■「生徒指導」全体の傾向
「生徒指導提要」が出されてから、 生徒指導に関する出題のほとんどが「生徒指導提要」の問題になってしまったが、先にも述べた通り、今年は「いじめ」に関する事件が多く、文科省や各自治体から出された「いじめ」対策の資料も多く、出題にも影響したが、今後も「生徒指導提要」が中心となることは間違いない。
ただ、児童生徒の問題行動の実態に関する出題や具体的な指導法の出題も増えてくると思われる。
文科省が、毎年まとめている「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」も確認し、実態を把握した上で、指導の基本となる「生徒指導提要」を理解し、実際の具体的指導法について考えておく、というステップが理想的だろう。
ただし、「いじめ」については、「いじめ対策推進基本法」が公布され、「いじめ防止基本方針」が策定されたため、来年は「いじめ」関連の問題は独立した形で多くの出題が予想される。