特別支援教育の出題分析と「障がい者制度改革」のまとめ
■特別支援教育の出題パターン
特別支援教育に関する出題は、特別支援学校の志望者だけでなく、すべての教職教養に必ず出題されるようになった。
出題数も固定されてきたが、出題内容の傾向も固定化してきたと言えるだろう。
難易度も少しずつ上昇しており、確実な対策が必要である。
これまでの教職教養の問題は教育原理・教育法規・教育心理・教育
史に大分類されてきたが、最近ではこの分類自体が大きく変化している。
特別支援教育についての出題は、その代表と言ってもいいだろう。これまでの領域すべての要素を含む問題となっている。
したがって、特別支援教育はこれまでのような分類で学習するのではなく、総合的な対策が必要となっている。
出題数が多いと言っても、ほぼ出題のパターンは限られている。
最近3~4年の出題問題を分類すると、次の四つに分けられる。
●法規に関する出題
●資料による出題
●心理・発達障害に関する問題
●新しい制度・最近の動向など
■法規に閏する出題
特別支援教育に関する法規の問題については、これまで出題される法律は限定されていた。
最も基本となる、教育基本法第四条第二項を中心に、学校教育法第八章の特別支援教育から第七二条~八一条、特に七二条・七四条・七六条・八一条などは出題率が高い。
また学校教育法施行令第二二条の三はこれまで、特別支援学校の専門教養では出題されていても、教職教養では必要なかったが、最近は教職教養でも出題された自治体があるので、確認しておきたい。また、学校教育法施行規則一四○条や、特別支援学校への就学奨励 に関する法律なども出題されるようになっており、その範囲は広がっている。
また、発達障害者支援法や障害者基本法についての出題も増えている。
学校教育法や学校教育法施行令などは、他の法規の条文ととに、 小問で出題されることも多いが、発達障害者支援法や障害者基本法は、大きな設問として出題されているので、内容をしっかり把握しておかなければならない。
今年9月には学校教育法施行令の一部が改正された。
これは中教審初等中等教育分科会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」に、「就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人 の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当である。」との提言がされたこと等を踏まえての改正であり、来年度以降は多くの出題が予想される。
■資料問題
特別支援教育について、これまで最も多く出題されてきたのが、「特別支援教育の推進について(局長通知)」(平成19年4月)である。
通知が出されてから昨年までの5年間、 最も多く出題されてきた。
今年の出題でも、特別支援教育についての出題のうち、25%はこの通知すらの出題であった。
内容は、「1,特別支援教育の理念 2,校長の責務 3,特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組 4,特別支援学校における取組 5,教育委員会等における支援 6,保護者からの相 談への対応や早期からの連携 7,教育活動等を行う際の留意事項等」 から構成されており、出題は「3,特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組」が特に多く、「4,特別支援学校における取組」 や「7,教育活動等を行う際の留意事項等」などからも出題されている。
「3,特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組」には(1) 特別支援教育に関する校内委員会の設置(2)実態把握(3)特別支援教育コーディネーターの指名(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用(5)「個別の指導計画」の作成(6)教員の専門性の向上」の6項目が示されているが、(1)(3)(4)を中心に全体から出題されている。
まさに特別支援教育の基礎・基本の出題ということになる。
他には、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(平成24年7月23日)が目についた。
これは、障害者制度改革に基づき、共生社会の形成に向けた今後の進め方を提言したもので、就学先決定の在り方や障害のある子どもが十分に教育を受けられるための環境整備などについてまとめたものである。
■今後出題が予想される資料
障がい者制度改革が、いよいよ具体的な段階となり、最近は文部科学省からいくつもの報告書や通知が出されている。
今後は、前述の資料に加え、「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」 「障害のある児童生徒の教材の充実について報告」などの出題が予想される。
そして改正された学校教育法施行令自体の出題も予想されるが「学校教育法施行令の一部改正について(通知)からの出題も予想される。
しかし、内容から見て出題者が最も出したくなるのが「教育支援資料」だろう。
これは、学校教育法施行令の改正等に伴う就学手続の大幅な見直しが行われたことを踏まえ、これまでの「就学指導資料」を改め、新たに 「教育支援資料」としてとりまとめたものである。
専門教養だけではなく、教職教養でも、多くの問題に引用されると考えられる。
その主な内容の構成を次ページに紹介したので、参考にして是非実物に目を通してもらいたい。
■その他の出題
特別支援教育に関する出題では、 他に教育心理に分類されるような発達障害についての出題がある。
特に、LD、ADHD、高機能自閉症等の定義や特徴などに出題 が集中している。
また、総合問題として全ての要素を含んでいる問題も多く、特別支援教育の仕組みについての設問が多い。
総合問題の出題率は年々高くなっている。
特に今後は制度改革そのものについての出題も多くなってくると 思われる。
見ておかなければならない資料も多いが、早めの準備で万全にしておきたい。