2014年度 教職教養の出題状況
教職教養の出題傾向には今年も変化があった。
今年は事前に出題されそうな、注目ポイントがあったため、驚くような変化ではなかったが、徐々に変化する内容を確実に把握して、来年に向けた 教員試験対策のスタートを正しく切りましょう。
■教職教養の出題傾向
今年の教職教養の出題を見ると、事前に出題の変更を発表していた兵庫県や福井県などを除くと、その形式に大きな変化がないように見える。
出題形式・問題数・出題範囲などは確かに大きな変化はなかったが、出題内容には変化が見られた。
出典資料などは範囲も一段と広がった。
ただ、今年は出題が予想された新しい項目も少なくなく、想定内の出題とも言えるだろう。
■「いじめ」に関する新傾向
今年の教職教養の一つ目の注目点ついては「いじめ」の問題である。
2011年10月に大津市でいじめによる自殺事件があり、学校は全校生徒に対して行ったアンケートの結果を公表せず、教育委員会もいじめと自殺との因果関係を認めず、これらの対応に批判が集中した。その後第三者調査委員会によって13年1月にやっと自殺の直接の原因は同級生らによるいじめであると結論付けられた。
この事件については、市や学校、教育委員会の対応も大きな問題となり、文部科学省も「いじめの問題に関する児童生徒の実態把握並びに教育委員会及び学校の取組状況に係る緊急調査」を行い、12年11月に「緊急調査を踏まえた取組の徹底について」と題した通知を出した。
このような経過があったために、今年の試験では「いじめ」に関する出題、特に文科省の通知の出題が予想された。
結果は予想通り、かなり多くの自治体でいじめに関する出題があった。
いじめに関する出題については、平成18年の通知「いじめ問題への取組の徹底について」や「生徒指導提要」から出題している自治 体もあるが、その多くは12年の通知からの出題だった。
今後は、この通知文の出題も続くと思われるが、6月に公布された「いじめ防止対策推進法」からの出題もかなり多くの出題が予想される。
■「体罰」に関する新傾向
次に出題が予想されたのが、「体罰」に関する問題である。
2012年12月に大阪市立桜宮高等学校バスケットボール部で顧問に よる体罰があり、体罰を受けた生徒が自殺してしまった。
この事件を受け、文部科学省は状況を聴取し、徹底した事実解明等を指導、各都道府県に対しても、主体的に体罰の調査を行い報告を求めた。
そして、調査を踏まえ、体罰の禁止と都道府県における主体的な実態把握の徹底を求める指導通知を出した。
これが「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知・平成25年3月13日)」である。
この通知には、別紙として「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」もあり、この通知からの出題が予想され、実際には予想以上の出題があり、「体罰」については、体罰を禁止している法律 (学校教育法11条)と合わせての設問もあった。
もともと、学校教育法11条は例年、法規の中でも最も出題が多い条文である。
それは、体罰がなくならないためである。
今年八月に「体罰根絶に向けた取組の徹底について」という通知 も出されているので、来年以降は出題が予想される。
■教育振興基本計画の出題
平成20年に閣議決定された「教育振興基本計画」はこれまで多くの自治体で出題され続けてきた。
「教育振興基本計画」は教育振興に向けた施策を総合的、計画的に進めるための基本計画で、改正された教育基本法で政府が作り国会に報告することが定められたものである。
今後10年間を通じて目指すべき教育の姿を明らかにするとともに、今後5年間に取り組むべき施策を総合的・計画的に推進するものである。
政府は平成25年6月に第2期教育振興基本計画を閣議決定した。
当然教員試験では多くの出題が予想されたが、教員試験の問題は例年5月には仕上がっている場合が多いので、6月に閣議決定される「第2期教育振興基本計画」を出題するのは間に合わないと考えるのが普通であり出題されないか、もしくは平成25年4月に出された中央教育審議会答申「第2期教育振興基本計画について」が出題されることが予想された。
しかし、実際には中教審答申と「第2期教育振興基本計画」自体は同じくらい出題された。
今後は、当然どの自治体も第2期計画自体を出題するだろう。
■学習指導要領
学習指導要領についての出題は、ここ数年大変多かった。
それは、平成20年版の新学習指導要領が告示されたのに伴って、改訂についての問題がしばらく続いたからである。
しかし、各学校で新学習指導要領が全面実施されると 改訂についての出題などが減少するため、学習指導要領の問題の比率が下がってくる。
このような流れはこれまでの定番だった。
今年も、決して例外ではなかった。
改訂に関する問題は確実に減少している。
ただ、学習指導要領自体からの出題と、学習指導要領解説書からの出題が意外と多く、減少率は大きくなかった。
総則・道徳・特別活動・総合的な学習の時間からの出題は一段と増えた。
■出題が定言した資料問題
資料問題の出題は今年も増加した。
すでに説明した新しい資料が多くの自治体で出題された上に、決して新しくはない資料も出題が定着してきたからである。
市販の問題集や雑誌の一部は資料問題をすべて「教育時事」に分類しているが、これは明らかに誤りであり、対策方法を間違う原因になってしまう。
時事問題はそれを出す意図があり、何年も続けて出題している資料には、別の出題意図がある。
出題が定着してきた資料は次のような資料である。
●生徒指導提要(2010年4月)
●学校安全の推進に関する計画(2012年4月閣議決定)
●教育の情報化ビジョン~21型世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指して~(2011年4月)
●「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」 (中央教育審議会答申 2011年1月)
「生徒指導提要」については、新しい資料だから出題されたのではなく、生徒指導についての最も基本的資料として大変重要なので出されたのであり、しばらくは教職教養の大きな存在としてその出題は続くと思われる。
「教育の情報化ビジョン」も「キャリア教育・職業教育の在り方について」の答申も、いくつもの県で出題された。
もともと、これまでも情報教育とキャリア教育については年々出題率が増えていたが、今年は一段と出題が増えた。
情報教育については、2009年に出された「教育の情報化に関する手引き」も重要な資料であり、こちらもいくつかの自治体で出題されている。
今後も、情報教育についてはこの二つの資料が中心となって出題されると思われる。
キャリア教育については、この答申がしばらくは多く出題されると思われる。
中教審の答申である「今後の青少年の体験活動の推進について(平成25年1月)、「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について(平成24年1月)もいくつかの自治体で出されているが、これらは、あまりいつまでも出題は続かないと思われるが、まだ一・二年は要注意だろう。
■特段支援教育の定言
特別支援教育の出題は、特殊教育から制度が変更されたときから上昇し、そのまま定着したようだ。
現在は、教育原理の一領域というよりも、一つの分野として準備をするべき出題率となっている。
それは、出題内容が、発達障害に関する教育心理の問題、関連法規、文科省の報告や通知など範囲が広いからである。
特に 平成19年4月1日に出された「特別支援教育の推進について(通知)」 は今年も、出題されている。
「特別支援教育の理念」も「特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組」も示されている体と考えられる。
ただ、今年はそれに加えて中央教育審議会の報告も予想に反していくつもの自治体で出題されている。